春色の恋−カナコ−[完]
「カオリさん、すごく素敵だったよ」

「ええ、私も会ってきたわ。本当に素敵ね。コウヘイもやるわね」

「やだ、もう」

くすくす笑う河合さんは私の横に居て。

見上げればいつでも私にやさしい瞳を見せてくれる。

「まあ、カナコもなかなかだけどね」

私の耳元でそうつぶやいたお母さんは、すごくいたずらっ子のような顔をして笑っていて。

河合さんに聞かれたんじゃないかとびっくりした私は、真っ赤になった顔を思わず河合さんに向けてしまった。

「ん?どうした?」

赤い顔をした私を不思議そうに見ている河合さんに、聞かれなかったんだとほっとしたけど。

「俺も、なかなかだろ?」

なんて耳元でつぶやいた河合さんは、お母さんと同じようににやりと笑った。

聞こえていたんだ!

恥ずかしいけど、恥ずかしいけどっ。

でも、実は気が付いていたんだよね。

カオリさんのお友達だと思われる、若い女性たち。

時々感じる視線は、私の隣にいる河合さんに注がれているっていうこと。
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