春色の恋−カナコ−[完]
私は生まれたときから素敵な家族に愛されて来たんだとすごく感じた。

「あんなにきれいな奥さんもらって。安心したわ」

ねえ?と隣にいるお父さんに声をかけると、お父さんも小さく頷いていて。

河合さんを見ると、やさしい目でおにいちゃんたちを見つめていた。

「コウスケさん?」

「ん?」

「カナコ、あなたも幸せになりなさいね」

河合さんに話しかけ、目が合ったと同時にお母さんにそう言われて。

びっくりしてお母さんのほうを見ると、お母さんは河合さんをまっすぐ見ていた。

「カナコをよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

二人でまじめに挨拶して、間に挟まれた私もお母さんに頭を下げた。

「今日はコウヘイの結婚式だぞ」

呆れたようにお父さんが呟いて、またビールを口にして。

「少し飲みすぎですよ!」

お父さんをたしなめつつも、嬉しそうにお父さんのグラスにビールを注ぐお母さん。

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