春色の恋−カナコ−[完]
花嫁修業のつもりで手伝いなさい、なんてお母さんは笑って言っていたけど。

これでもおにいちゃんと生活していた間は、忙しいおにいちゃんよりも私のほうが家事をこなす時間は多くて。

一人でほぼ毎日家事をしていた時期もあったから、家事全般はできていると思うけど。

それでも、掃除一つにしてもお母さんのやり方とは違っていたりして、一緒にやることで新しい発見もたくさんあった。

早く帰った日は二人で並んでキッチンに立ち、なかなか帰宅しないお父さんを待って遅い夕食を3人で食べたりして。

おにいちゃんたちが帰ってくるまでの間、忙しい河合さんとは電話やメールだけで会うことはできなかったけど、家族で過ごす貴重な時間を満喫することが出来た。


一週間が過ぎて、土曜日も出勤という河合さんの身体を心配しつつも隣のハナちゃんと買い物へ出かけた。

目的があるわけではなくて、完全にウインドウショッピング。

こんな風に朝からゆっくり二人で出掛けるのも久しぶりで、ハナちゃんの大学の話を聞いたり私の仕事のことを話したり。

会話は途切れることがなくてあっという間に夕方。

歩き疲れた私たちは駅前のカフェで休憩をとりつつ、帰宅までの時間を潰していた。

17時頃、そろそろ帰ろうかとお店を出たときに河合さんから電話があって。

『今仕事が終わったよ。会えないかな?』
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