春色の恋−カナコ−[完]
お互いに酌み合っている二人の姿を見ながら、お母さんもくすくす笑っていて。

私もなんだか嬉しくて、自然と笑顔になってしまう。

「いただきます」

食事をしながら今日のことを話すと、皆が色んな事を言いつつもきちんと話を聞いてくれて。

デザートは河合さんが持ってきてくれたオレンジで。

お母さんが切ってくれたのを、皆でつまみながらおにいちゃんたちの新婚旅行の話になった。

「カナコはどこへ行きたいの?」

「え?」

突然のお母さんの質問に、何の話かわからなくて。

頭に沢山ハテナを浮かべていると、横でお茶を飲んでいた河合さんが少しむせた。

「やだ、新婚旅行の話をしていたでしょう?」

「え!!」

予想外のことに、手にしていたオレンジを落としそうになってしまう。

新婚旅行!?私の!?

そんな話をしたこともないし、考えたこともなかった。

…嘘。考えたことくらいはあるけど…。
< 224 / 241 >

この作品をシェア

pagetop