春色の恋−カナコ−[完]
明日までお休みのおにいちゃんとカオリさんは、長旅の疲れを取るために早めに寝室へ行ってしまって。

明日は出勤の河合さんは、お茶を飲んでから帰宅した。

寝る前にキッチンでお水を飲んでいると、お母さんが寝室から出てきて。

「まだ起きていたの?」

「お母さんも、寝ないの?」

キッチンへ入って来たお母さんは、私がお水を差し出すとありがとうと受け取り口を付けた。

「もう寝るけど、カナコ。幸せ?」

「え?」

突然の問いかけに、その意味がよくわからなくて。

お母さんの顔を見ると、真剣な眼差しで。

「幸せ?」

ふんわり笑って再び問いかけられ、きっと河合さんとのことを聞かれているのだと感じた。

幸せ?

大好きな人と一緒に過ごせる時間も、離れている時間も。

いつも彼のことを考えていて、そして河合さんの笑顔を思い出して私も笑顔になれる。

「うん、幸せ」

胸を張って幸せって言えるのが、幸せなのかも。

「そうね。よかったわ」
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