春色の恋−カナコ−[完]
お腹を見ると、妊婦さんってすぐにわかる立派なお腹だけど、それ以外は変わらず綺麗で。

どんな素敵なお母さんになるんだろう?

「ああ、そうだな。乗ってくか?」

「え、でも…」

「今日は私も用事ないし、お義母さんも家にいるから大丈夫よ」

私の気持ちが通じたのか、カオリさんは私とおにいちゃんの背中を押すようにして送り出してくれた。

おにいちゃんの車の助手席に乗り込むのは、久しぶり。

時々送ってもらったりするけど、その回数もぐんと減った。

減った理由は、おにいちゃんが結婚したからっていうのもあるけど、送ってもらわなくても河合さんが迎えに来てくれることが多くなったから。

そのまま我が家に泊っていくこともごく当たり前になってきていた。

「なんか、久しぶりだな」

運転しながらおにいちゃんが笑って。

「うん、久しぶりだね」

こうして二人きりになることがすごく久しぶりだった。

式場まではあっという間についてしまい、一緒に中まで来てくれたおにいちゃんと共に担当者に書類を渡した。
< 232 / 241 >

この作品をシェア

pagetop