春色の恋−カナコ−[完]

「ありがとう。おにいちゃん、大好き」

にっこり笑うと、一瞬困った顔をしたおにいちゃんだったけどすぐに私から視線をそらせてしまう。

でも、その横顔は笑っていて。

「俺も、カナコが好きだよ」

私たち兄妹は、このままずっと変わらないんだと思う。

もうすぐ離れてしまうけど、でも悲しい別れじゃないことは確か。

おにいちゃんは大切な人との間にもうすぐ新しい命が誕生して。

私は、大切な人ともうすぐ新しい家族になる。

「そろそろ帰ろうか?」

小さなころのように無邪気に抱きつくことはできないけど。

でも、兄妹であることは変わらないから。

「うん、帰ろう!」

もうすぐ私は浅野カナコから河合カナコになるんだ。

帰りの車の中は、昔の思い出話に花が咲いて。

運転するおにいちゃんが、少しだけ遠回りしたのに気がついたけど、何も言わなかった。




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