春色の恋−カナコ−[完]
「じゃあ、俺の行きたいところでもいいかな?」

食べ終わったお弁当を片付け、もう一度散歩コースを歩いてから車に戻った。

河合さんの行きたいところはどこなんだろう?

聞いてみたけど秘密としか教えてくれなくて。

少しだけわくわくしながら車の中で河合さんとの会話を楽しんだ。

ふと気が付くと、見覚えのある景色が広がっていて。

「ここって…」

いつも、平日に私が乗り降りしている会社最寄りの駅前だった。

コインパーキングに車を入れ、駅へ向って少しだけ歩く。

「どこへ行くんですか?」

お買い物でもするのかな?

沢山のお店が集まるビルに入っていくと、高級ブランドのショップで立ち止まった。

「え?ここ?」

「そう、俺からのプレゼントを買いにね」

「え?」

戸惑っている私の手を引いて、お店の中に入っていった。

私一人だったら敷居が高くて入れないかも。

そう思わせる雰囲気のあるショップで、店員さんに指輪を見に来た事を伝えると、すぐに案内されていくつか見せてくれた。

< 82 / 241 >

この作品をシェア

pagetop