春色の恋−カナコ−[完]
そのまま持ち帰ることができるというので、きれいにラッピングしてもらった。

「あの、本当にいいんですか?」

「もちろん。本当は、プロポーズするときに渡したかったから、順番が変わっちゃったけどね」

今夜改めてプレゼントしてくれるというその小さな箱を、河合さんは大切そうに持っていて。

反対の手につながれた私の手に、まだ指輪はないけどもう心はいっぱいいっぱいだった。

夕飯はレストランへ食べに行くことになっていたらしくて、河合さんのマンションへ戻り休憩することに。

「あ、私コーヒー入れましょうか」

「ああいいよ、俺がやるから」

カナコちゃんは座っていてねとソファに座らされ、河合さんが美味しいコーヒーを入れてきてくれた。

「ありがとうございます」

淹れたてのコーヒーを二人で飲みながら、今日見てきた水族館の話で盛り上がったりして。

5時半ごろに家を出るというので、なんとなくつけたテレビから流れている外国の風景を見ながら、いつか一緒に行きたいねなんて話していた。

「カナコちゃん」

不意に呼ばれた名前に、ハイ?と返事をしながら横の河合さんを見ると、手に持っていたマグカップをそっと取り上げられてしまた。
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