春色の恋−カナコ−[完]
さっぱりしてお風呂から出て、ドライヤーを借りて髪の毛を乾かしてからリビングへ戻ると、部屋着に着替えた河合さんが新聞を読んでいて。

「お先に頂きました」

「あ、じゃあ俺も入ってくるから。冷蔵庫から飲み物とか出していいからね」

入れ替わりで河合さんはお風呂に入ってしまった。

なんか、少しだけさみしいと思うのはわがままなのかな?

一緒にお風呂に入ることを考えると、とてもじゃないけど無理だと思うんだけど。

でも、こういうすれ違いってさみしいんだなぁ。

じゃあ、一緒に入る?

…無理だし!

河合さんに言われたとおり、冷蔵庫から水のペットボトルを取り出し、コップに入れて飲みながらそんなことを考えていたら、あっという間に河合さんが出てきた。

早い!と思ったけどふと時計を見るとそれなりに時間が経過していて。

私、こんなに長い時間考え込んでいたの?

「俺にももらえる?」

「あ、はい」

手元にあったペットボトルから水を注ぐと、にっこりと笑いながら河合さんがそれを一気に飲み干した。

「ありがとう。じゃあ、寝ようか?」

飲み干した水のコップをカウンターに置くと、呆然と立っている私の手を取り、あっという間に寝室のベッドに座らされてしまった。

< 87 / 241 >

この作品をシェア

pagetop