春色の恋−カナコ−[完]
「そうか、それは光栄だね。明日にでもコウヘイに挨拶に行こうか」

「ええっ!」

なんだか急で、思わず体を河合さんから離して彼の顔を見上げてしまった。

私を見下ろす彼の顔は、とてもうれしそうで。でも、ちょっとだけ、いじわるっぽくて。

「だめだった?」

驚いている私に、大きな声で笑っている河合さんだけど。

「だめ、じゃない、です」

私は耳まで赤くして、彼にぎゅっと抱きついた。

「かわいいね」

私の背中にまわされた大きな手。

とくん、とくんと響く彼の鼓動。

好きな人に触れていると、こんなにも安心できるんだ。

「じゃあ、明日に備えて今日はもう寝るとしますか?」

河合さんの言葉に、心臓が大きく動いた。

寝るって、寝るって、やっぱ、一緒にだよね?

河合さんのマンションは広いけど、ベッドルームのほかにゲストルームがあるとは思えないし。

どうしよう。
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