ショートケーキと羊羹の空想論
変身猫とショートケーキの彼


 今しがた見た光景を思い出し、あれは間違いなく変身猫だと思った。

 学校からの帰宅中、毛並みの綺麗な白い猫と遭遇した。今朝も見かけた迷い猫だと思い、ついあとをつけてしまった。

 商店街裏にある小洒落たカフェの隣りに雑草の海と化した空き地があり、そこで足を止めた。ところどころに木が植わっていて、外側をぐるりと取り囲むように金網のフェンスが張られている。追いかけてきた猫はフェンスの切れ目をくぐり抜けた。

 目を丸くしながら私はフェンスの外を移動し、空き地を見つめた。(くさむら)に飛び込んだ猫を目だけで追いかけた。ちょうど一本の木が視界を遮り、慌てて猫の行方を探した。

 そこで私は見てしまったのだ。さっきまで見ていた白い猫と入れ違いに男の人が現れるのを。

 白いシャツに黒のパンツ姿ですらりと背の高い男性だった。日焼けのない肌のせいか、ストレートの黒髪がいっそう映えて見えた。

 横顔でも綺麗な顔立ちをしているのが分かった。こちらに背を向けた男性は左手に白い包帯を巻いていた。
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