ショートケーキと羊羹の空想論
「でもね。元々が猫の姿だったらもっと素敵だと思うのよ。魔法使いがさ……猫を人間に変えちゃうの。人間の女の子に恋をした猫が、お近づきになりたくて人間の男の子になっちゃう、みたいな。そんなファンタジー……」

 諦めきれないファンタジー現象をやはり愚痴としてこぼしてしまう。彼は柔らかい笑みを浮かべ、カップを白いソーサーに置いた。

「じゃあそういう物語を作ったら見せてくださいよ、俺が先輩の素敵を判定しますから」

「……ん、分かった」

 恥ずかしいという気持ちはあったけれど、正直なところ嬉しいと思っていた。

 教室では地味でさえないグループに属している私だが、彼は私の好きなことを笑わない。

「ところであん子先輩って、実は忘れっぽい性格だったんですね」

「え、なにが?」

 カフェを出て帰る際、何故か真柴くんが落ち込んで肩を落とすので、無性に気になった。何か失礼なことをして傷付けたのかもしれない。

「……いや、別に」

 真柴くんは拗ねてそっぽを向いた。けれども視線はとんぼ帰りをし、ハラハラする私の様子を興味深く観察した。「まぁいいか」と独りごち、照れ臭そうに頭を触っていた。

 ***

< 13 / 26 >

この作品をシェア

pagetop