ショートケーキと羊羹の空想論
 校内で陽キャの彼に話しかけられたことから、私は周りを警戒した。室内には私と彼と図書係の女子生徒だけだ。

 私は意を決して、先ほど起こった現象を彼にも話すことにした。

「それよりも大変なの! さっき部屋のどこかが光ってね、この本が広げてここに置いてあったの!」

 真柴くんは、うん? と反応し、首を捻った。

「これは異世界転移、かもしれない」

「いせ、かい……?」

「本が光って直前まで読んでいた人を吸い込んだのよ、きっと。そうに違いないわ」

「あ、いや、この本は……」

「ちょうどファンタジーな物語について書いてあるし。私、今日はこれを借りて帰る。部屋で122ページ目を開いて待つの。どういう経緯を経たら光るのか……。検証しなきゃ」

「え、ちょっとあん子先輩っ」

 待ってください、と言って腕を掴まれた。

「それだときっと検証にはならないですよ?」

「え。どういう、意味?」

「あん子先輩の説を検証するなら、同じ時間帯、同じ場所でやるのが正解です」

 それもそうだ。私は即座に左腕につけた腕時計を確認した。午後四時四十八分を指している。
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