ショートケーキと羊羹の空想論
 変身猫とは私が作った造語で、猫から別の生き物に変身するという意味だ。

「しかもあんな綺麗な男の人に」

 猫と同様に、さっき見た男性の左手にも白い包帯が巻かれていた。同一人物に違いないからだ。

 フィクションでしか起こり得ない現象に、私は胸を躍らせた。

 猫が人間に変身するなんて素敵。例えばそう、魔法使いの援助を受けて自由自在に姿を変えられるとか? 人間になって何かやりたいことを叶えたいとか……。

 そう考えたところで逆の場合もあるのかもしれない、と思考があちこちを飛び回る。

 私は昔から空想にふけるのが好きな子供だった。現実にはあり得ない現象であればあるほど、ワクワクした。ファンタジーには夢がある。

 空飛ぶ箱庭、翼を持つ天使やキマイラ、魔法使い、未来や過去に跳ぶタイムリープ、そして変身能力。これらは私に想像と創作の楽しさを与えてくれる。

 作家や脚本家になるのを密かに夢見ていた。高校三年生という受験生の現在、私は夢を叶えるために専門学校を志望している。
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