朝、目が覚めたら意地悪なアイツと一緒のベッドで寝ていた件について



「もう春野の事一生名前で呼ばない」

「それは困る!わかった!キスして悪かった!」


春野が必死になったのを見ると笑ってしまう。


「ふふふっ…嘘だよ」

「は!?なんだよ!じゃあ…名前で呼んでくれんの?」

「うーん…呼ぶ努力はする…」


そう言うと春野はすごく喜んでくれた。


名前で呼ぶだけなのにこんなに喜んでくれるなんて。


春野に好かれる事が暖かくて、嬉しい気持ちになる…。


これは早く名前で呼ぶようにしなくちゃ!



そして、ももこちゃんと遊びながら春野と一緒の時間を過ごして門限の時間の前に家に帰れるように春野の家を出た。



春野が家まで送ってくれて今回はお兄ちゃんに春野を紹介する事にした。


「お兄ちゃん…えっと…この前本当の事言わなくてごめんね…私達付き合ってるんだ…」



沈黙…



玄関で仁王立ちをしているお兄ちゃんは春野をジーッと見ながら何か考えている。


「…琴音。山田君が琴音の事好きだって言ってたぞ?」

「今山田君は関係ないでしょ!」

「琴音、俺は山田君を応援している。春野君、君は一年の時授業をサボって帰ることがよくあったようだけど、その情報について間違いはないか教えてもらいたい」

「う……間違いないです」


何でそんな個人情報知ってるの!?

どんなツテがあるのか知らないけど、もうそんな事調べてるなんて…

春野の事気に入ってないのがすごく伝わってくる。

そういえば…確かに一年の夏頃お昼休みが終わったら春野がいない事が何度かあった。

あの時は春野の事が嫌いだったからからかわれなくて済むくらいにしか思ってなかったけど…


「お兄ちゃん、去年の事蒸し返さないでよ!何か事情があったのかもしれないじゃん!それにそんな事今関係ないじゃん」

「やむ得ない事情があるなら何故担任に帰宅する事を伝えないんだ?俺はそういう所ちゃんと出来ない人間と琴音が付き合うのは反対だ。それに彼は……いや、何でもない。なんで彼なんだ?顔が良いっていうなら山田君だって負けてないじゃないか」


どうしてか知らないけど、春野の事気に入ってないからって理由を取ってつけたようにそんな事を言ってくるお兄ちゃんにカチンと来た。


「お兄ちゃん…春野の事知らないくせにそんな事言うなんて…最低!お兄ちゃんに認めて貰わなくても関係ないし!大っ嫌い!」


私はお兄ちゃんが春野の事を見ようともしない姿勢に苛立って家から飛び出した。


「琴音!」


外に飛び出して行くあてなんてないけどひたすら走っていると追い掛けて来た春野に腕を掴まれて止められる。


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