桜色の雨に打たれて
プロローグ
外は霧雨が降っていた。
窓からは滴で作られた模様しか見えない。
耳に入ってくるのは、雨音だけ。
今日から高校か、なんか、気がだるいな。
中学生のときでさえ、友達全然いなかったのに。
学校なんて、無くなればいいのに。
*
「美優、今日から高校なんだから早く準備してね」
「うん、分かってるよ」
お母さんと話しながら、高校に行く準備をした。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい、また式でね」
私はお母さんに手を振って家を出た。
学校嫌だな。
*
門に着くと、人がザワザワいる。
人混みは嫌いだ。
雨も降ってるし、早く教室に行こう。
えっと、3組か。
場所は、A棟の三階。
三階って遠いな。
私は、階段を上り始めた。10段上ると、もうすでに酸欠だった。最近、全然運動をしていなかったので、体力が落ちてしまったのだ。
あと、少しだ。あと5段なのに、ずいぶん遠いように見える。
*
私は、息を切らしながら教室に向かった。
教室に入ると、湿った空気が広がっている。
少し、薄暗い。
今日からここが私の教室。
この教室にいたのは、一人の男の子だけだった。
透き通った白い肌、はっきりとした桜色の瞳、ふんわりとした赤茶色の髪。
綺麗な人だな。
彼をずっと見ていると、変なタイミングで目が合ってしまった。
すると、彼がこっちに近づいてくる。
私の目の前まで来ると、彼が口を開いた。
「おはよ、今日から同じクラスだね。よろしく」
「え?」
常に話しかけにくいオーラを放っている私が話しかけられた。
私は混乱して速い瞬きを繰り返す。
「どうした?」
「いや、なんでもないよ。よ、よろしくね。」
高校で話しかけられたのは、この人が初めてだった。
会ったばかりなのに、なぜか少し親しさを感じた。
「そうだ、名前なんていうの?」
「えっと、藤咲美優です。えっと、、、」
「僕は、音瀬透真。透真って呼んで」
「わ、分かりました。」
「なんで敬語なんだよ」
「あ、はい。じゃなくて、、、うん!」
私がこんな人に話しかけられるのは初めてだった。
私なんかに笑顔で話しかけるなんて、変わった人だな。
そんなことを考えながら、私は右手の小指をさすった。
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