桜色の雨に打たれて
桜の雨
*
あれからどのくらい時間がたっただろうか。
透真と電話してから強い雨が続いた。
私たちはもう、学年が上がろうとしている頃だった。
「今日も雨かよ!まじうぜぇ」
「それなー!」
男子たちがそう言っていた。
透真は私のために頑張っているけど、桜の雨が降ると、何が起こるかは知らなかった。
聞きたいけど、しばらく話してないから話しづらい状況だった。
*
3月。
もうすぐ進級。
なぜか今日は雨が降らなかった。
そして、めずらしく学校に透真が来なかった。
この日は1日が長く感じた。
透真がいなくて、授業に集中できなかった。
早く帰りたいと思った。
「ただいま」
やっと家に帰れたと思うと、透真からメールが来ていた。
『虹の丘公園の丘に来て』
それを見た私は手も洗わず、虹の丘公園の方へ走った。
*
「はぁ、はぁ」
20分ほど走り続けて、丘の下に着いた。
丘を登ってしばらく歩くと、透真がいた。
「美優」
「、、、」
「来て」
「あ、うん」
ゆっくりと透真の方へ向かうと、強い風が吹いた。
「わっ」
透真が目を瞑って、手を空に向ける。
すると、私たちの真上に金色に光る雲が現れた。
私はぽっかりと口を開けたまま雲を見ていた。
「ねぇ、美優。手、繋いでもいい?」
「うん、いいよ」
「ありがと」
透真が息を吸うと、雲が光り、何かが手に落ちてくる。
雨。
――桜色の雨だった。
霧のように細かくて、毛布で包まれているみたいで、すごく温かかった。
「と、透真、、、。これって、、、」
「やっと降らせられた。」
気づかないうちに私の目から涙がこぼれていた。
「透真」
「美優」
「「愛してる」」
*
「あなたは夫と幸せな家庭を作り、愛し合うことを誓いますか?」
「――誓います」
「それでは、誓いのキスを」
「透真。私、今幸せだよ」
「僕もだよ」
私たちはそう言ってそっとキスをした。
「「愛してる」」