桜色の雨に打たれて
止まない雨。
入学式が終わった。
お母さんと帰ろうとすると、途中で雨が激しくなった。
「どしゃ降りだね、早く帰ろう」
「うん」
傘を差していても、これだけの雨だから、やっぱり制服は濡れた。
雨の日って憂鬱だな。
髪はボサボサになるし、服も濡れるし、床は滑るし。
お母さんは、下を向いている私に話しかけてくる。
「友達出来た?」
「出来てないわけではないけど、、、」
「かっこいい人いた?」
「ちゃんと見てない。あと、彼氏いらないから」
「まぁ、これからね」
「なにそれ」
お母さんはニヤニヤしながら前を向く。
そして、私に期待するように靴音を鳴らした。
私に彼氏なんていなくていいんだ。
*
「ただいま」
中学校より人が多くて疲れてしまったので、休むために自分の部屋へ向かう。
「美優、どこ行くの?」
「部屋」
それだけ言って、ベッドにダイブした。
本当に疲れた。
――”透真”ってどんな人なんだろうな。
*
「美優、何してるのー?ご飯できたよー」
お母さんに呼ばれた。
ベッドでゴロゴロしていたので、寝てしまっていた。
そのせいで、髪が乱れた。
最悪だ。
重い体を起こして、髪をとかしてからダイニングに行った。
階段を降りると、好物のハンバーグが出来ていた。
「え、このハンバーグって、、、」
「私が作ったの!入学おめでとうー!」
「ありがとう。あ、お姉ちゃんは?」
「まだ、勉強だって。」
「そっか」
私には、2歳離れた姉の優奈がいる。
成績優秀で、見た目も綺麗で、私とは正反対のお姉ちゃん。
待ちたいけれど、とても空腹だったので食べることにした。
「いただきます」
一切れ口に入れるといつもの味が広がる。改めてお母さんの料理が一番好きだと思う。
お父さんにも食べてほしいな。
お父さんは、二年前からベルギーで仕事をしていて、日本に帰ってくるのは、年に二度くらいだ。
次はいつだろう。
*
「ご馳走様でしたー」
明日から授業だし、寝る準備しようかな。
寝る準備をしようとすると、後ろから軽やかな足音が聞こえた。
「にゃーん」
「つむー来たの。よしよ~し」
お腹がすいたのか、猫のつむぎが私の足元で鳴いている。
「はいはい、分かったよ~。ちょっと待ってね~」
そう言ってつむのお皿にご飯を入れる。
「ご飯入れたよ~。」
「にゃ」
「つむは本当にかわいいな!」
つむの頭をなでて、寝る準備をする。
「寝るね。おやすみ」
「今日は早いね。おやすみ」
お母さんと数秒の会話を終わらせ、ベッドに横になった数秒後に眠りについた。
このときも、ずっと豪雨が続いていた。