クリプト彼氏 ─ずぶ濡れDAOとカルダノ(ADA)の余裕がなくなった話─

仕事が立て込んでて、久々の休日、プレセール時代の友人と遊んだ帰り道。DAOはひどい電子雨に遭った。九月の天気は読めない。女心と秋の空だ。
プライベート用のカバンは折り畳み傘を入れ忘れていたし、ウォレットからの距離500m。コンビニで傘を買う気にもなれず、足には自信があったのでつい「雨を避けながら走って帰る」をやってしまった。「小学生男子か」などと自分にツッコミを入れた。びしょ濡れである。

マンションの廊下にDAOの足跡型の水たまりが続く。
バケツで水をかぶった感じのDAOが自宅前に着くと、玄関から顔を出したエイダと鉢合わせした。雨が止むのを見計らって出かけようとしたらしい。
「えっ?ダオちゃん!?どうしたの?濡れネズミじゃない!どうしたものかしら!?あ~!もう!うちでお風呂入ってって!丁度いいから♪」
これから出かけるはずだっただろうエイダはDAOを部屋に連れ込んだ。

残暑が厳しい日だったから、風邪をひく心配はないと考えたのだが、エイダの目にはインパクトが強かったらしい。玄関であらかたの服を脱がされパンツ一丁状態でバスタオルを被された。さすが仮想通貨界のマルチ商法と呼ばれるだけある。スムーズに風呂場まで連行された。思春期男子への配慮などない。下着をペロッと剥がされたDAOは風呂場に押し込められた。
花の香りがする。
生花の菊が風呂でひしめき浮いている。
「昨日は重陽の節句だったでしょ。マイニング所で飾った菊をもらってきて入れたの♪ 入浴剤の菊湯も良かったけど、本物は良いわね!香りもいいしとてもきれいで、誰かに見せたくなっちゃって♪」
農薬が心配だから湯舟には入るなと、釘を刺された。

身長が同じだから着替えはアタシの服で良いわよねと、しばらくしてからエイダは脱衣所から声掛けした。軽い悲鳴が聞こえたので扉を開けると、DAOが慌てて湯船に飛び込んだ。
「キャーエイ太さんのエッチ」
のび太君に風呂をのぞかれたしずかちゃんの名台詞をもじっている。のぼせて顔が赤いわけではないようだ。
「エイ太さんじゃないわよ!湯船に入っちゃってる!早く出てきて。もう洗い終わったんでしょ?念のためシャワーで掛け湯して出ましょうね」
うつむいて出ようとしない。
ばつが悪そうに「勃った」とつぶやいた。

眼前に菊の香りに包まれた恥じらいの美少年。「菊が、エイダみたいで」「花盛りでいい香りがして」「似てるなって思ってたら、茹だって少し咲き乱れてて、散り乱れてるのに気が付いて」「さっきまでここでエイダがシャワー浴びてたんだなって思ったら」
どうにも口説かれてるようにしか受け取れない。おとがいに手を添えると口づけた。聞いてられないので口をふさいだのだ。身を引くとDAOの体が寄ってくる。「もっとほしいな」ついばむようにDAOのキスを受けながら洗い場まで移動させると、濡れた腕をエイダのうなじにまわされた。「これから外出するのよ?服が濡れちゃうから」離れてほしい旨を察してくれない。

そんなに欲しいなら、とエイダはDAOの口内を貪りはじめた。丁寧に舌を絡めながら相手の舌先を何度もかすめる。まるでつ・ば・ぜり合いのよう。口内だけに。血管が多い舌裏をフェラさながらに舐めあげると口内は唾液で満ち口角からあふれ出る。

エイダの両手はDAOの耳から喉の弱い部分を優しく触れ、特にどこが弱いのかを探っていて、時たまDAOの体が小さく跳ねるのを愉しんでいたが大きな決め手にはなれなかった。

キスだけでイかせるには感度が弱いのであきらめた。両手でDAOの屹立を包む。明らかにお湯ではないもので濡れている。口の中の弱い部分を深くなぞられながら、DAOのものは緩慢に刺激を受け、腰が無意識に動いている。手のひらで先端の柔らかい部分を撫でながら片手で強く往復すると口の端から艶めいた声が漏れた。

風呂は廊下に面してることが多く、ここもそうだった。人がいれば丸聞こえなので、声が大きくなる前にできるだけ早く終わらせたい。DAO自身も快感に身をゆだねるように動き、エイダの手の中を往復する。呼吸が乱れ始めたので締め付けを強くして、スピードを上げた。

「エイダあっ、は…はぁっ!ん…っ」

びくびくと痙攣を手に感じて、目をやると熱いものが飛んだ。さすがDAO。自律して分散している。エイダは無意識にDAOの後ろに指を這わせ、解し始めていたことに気が付き、あわててやめた。

DAOの体から力が抜け、大きくため息をついた。我に返ったらしい。
「ダオちゃん、こんな…アタシ、ダオちゃんとはずっと仕事仲間として良い関係でいたいのよ。だから、こんなことはもうやめましょう」
出せば落ち着くと思い、説き伏せようとするも、DAOは悲しげな顔をみせた。
いわゆる賢者タイムかもしれない、と話すのをやめる。

無言でお互い乾いた服に着替え、ぽつぽつと会話をする。濡れた服は洗って返しとくとか、下着は新品だから返さなくていいとか、スマホは濡れてないか、とか。

去り際、まっすぐな目でDAOは言った。
「エイダ。俺、エイダが好きだ」
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