知ってしまった夫の秘密
 村本さんは自分のスマホを操作し、私へ向けてテーブルの上に置いた。
 画面には巡二が裸でベッドに寝ている写真が映し出されている。場所はホテルだろう。
 その隣には彼女が寄り添っていて、ふたりが写りこむように自撮りをした感じだ。


「彼って、ヤッたあとは必ず寝ちゃうじゃないですか。私が物音を立てても起きないし、今年の初めくらいから撮り始めたんです。違う写真もありますよ?」


 彼女が画面を水平にスクロールすると、また別の写真が現れた。
 同じように巡二が寝ている構図だけれど、さっきのものとは場所が違うので別の日だとわかる。


「私はキスの写真も自撮りしたいんですけど、彼が嫌だって言うから、こういうのしか撮れなくて。寝ているあいだにこっそり」


 スクロールするたびに、どんどん写真が出てくる。
 同じ日の写真が一枚もないのは頻繁に会っている証拠だし、なによりふたりとも裸なので肉体関係にあるのも事実だ。
 私は動揺がおさまらなくて、指先が小さく震えだした。


「夫とはいつから?」

「もう二年になります。週に二回くらい仕事のあとに会ってて」


 巡二が二年も前から不倫していたと知り、一気に目の前が真っ暗になった。少しも気づけなかった自分が不甲斐ない。

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