知ってしまった夫の秘密
「仕方ないですよ。彼、隠すのが上手ですもん。痕跡なんて残さないでしょう」
溜め息を吐きだすのを見て、村本さんが私の頭の中を見透かしたように言った。
たしかに、キス写真を撮るのを拒んだのもそういう意図だろう。証拠を一切残したくないからだ。
「どうして急に私にバラす気になったの?」
普通は逆にバレないように努めるものなのに。
二年間ずっと秘密の関係を続けていて、今になってどうして自ら暴露しようと思ったのか気になった。
「今の状況は、まるで奥さんと彼をシェアしているみたいで、それが嫌になったんです」
シェアって、大皿の料理みたいに言わないでもらいたい。
こちらは了承していないのだから、私の知らないあいだにあなたが勝手に奪い取っていただけでしょう?
「彼ね、私の家には一度も来たことがないんです。手料理を振る舞おうとしたら要らないと断られました。私には家庭的な部分を望んでいないんですって。そこは奥さんの領域なわけです」
「領域?」
「彼は明確に分けています。“妻”と“恋人”を。私は彼の身の回りの世話を焼いたりするのは許されないけど、その代わり恋人としてはすごく大事にされているんです。素敵なレストランで食事をしたり、ホテルも安いところは行きません。彼は雰囲気重視だから。プレゼントもたくさんくれるんです。つい最近もこのピアスを」
溜め息を吐きだすのを見て、村本さんが私の頭の中を見透かしたように言った。
たしかに、キス写真を撮るのを拒んだのもそういう意図だろう。証拠を一切残したくないからだ。
「どうして急に私にバラす気になったの?」
普通は逆にバレないように努めるものなのに。
二年間ずっと秘密の関係を続けていて、今になってどうして自ら暴露しようと思ったのか気になった。
「今の状況は、まるで奥さんと彼をシェアしているみたいで、それが嫌になったんです」
シェアって、大皿の料理みたいに言わないでもらいたい。
こちらは了承していないのだから、私の知らないあいだにあなたが勝手に奪い取っていただけでしょう?
「彼ね、私の家には一度も来たことがないんです。手料理を振る舞おうとしたら要らないと断られました。私には家庭的な部分を望んでいないんですって。そこは奥さんの領域なわけです」
「領域?」
「彼は明確に分けています。“妻”と“恋人”を。私は彼の身の回りの世話を焼いたりするのは許されないけど、その代わり恋人としてはすごく大事にされているんです。素敵なレストランで食事をしたり、ホテルも安いところは行きません。彼は雰囲気重視だから。プレゼントもたくさんくれるんです。つい最近もこのピアスを」