知ってしまった夫の秘密
「結婚前は巡二もあんな感じじゃなかったの。すごくやさしかったし、私の意見も聞いてくれてたんだけどな……」


　夫は自分で気づいていないかもしれないが、この三年でずいぶん変わってしまった。
　いつの間にか私の意見は論破して受け付けなくなった上、最近は昨日みたいに話を途中で切り上げる始末だ。

　話し合おうとしても話し合えない夫婦が存在するなんて、自分が実際に結婚してみるまで知らなかった。
　なんでも話して解決する、私たちはそんな基本的なことすらできないのだと自覚すれば、溜め息しか出てこない。


「うまくやっていこうとすると自分を押し殺すしかないの。それじゃダメなのはわかってるんだけど」


　結婚生活がうまくいっていないのは気づいている。だけど認めたくないんだ。

　大きな喧嘩をしたとか、特別な事柄があったわけではない。
　私も巡二も独身のときと生活スタイルが変わったせいもあるのだろう。結婚して、他人だったふたりが一緒に暮らし始めたのだから仕方ない。とはいえ、もう三年も経っているけれど。

　軌道修正して互いに歩み寄れば、家族として今後もやっていけるはずだ。夫婦仲はそこまで険悪ではない。
　
　でも、歩み寄ることで自分が思うように生きられないのなら、私はいったいどうしたらいいのだろう？



< 5 / 35 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop