知ってしまった夫の秘密
***

「おはようございます」


 アルバイト先であるイタリアンレストラン“Ombrello”(オンブレッロ)に出勤した私は、あいさつの声かけをしつつ、すぐに調理場の人数がひとり多いことに気づいた。
 いつもはオーナーの片桐(かたぎり)さんと見習いシェフの千彰(ちあき)くんのふたりだが、今日は三人居る。

 あとのひとりはおそらく、オーナーの甥である(たすく)さんだ。
 佑さんは別の店で働いているのだけれど、お休みの日に時折こちらを手伝いに来てくれるようになった。
 何度も一緒に働いているので私も顔は見知っている。

 彼は私と同い年だが、料理のセンスが抜群で、オーナーからの信頼も厚い。
 レシピがあるとはいえ、すぐにうちの店の味を再現してしまう腕前なのだとか。


「あ、真琴さん。おはよう」

「今日は佑さんが手伝ってくれるんですね。ありがとうございます」

「あれ? なにも説明受けてない?」


 よくわからない質問をされ、私は愛想笑いしながら首をかしげた。
 どうやら話がかみ合っていないみたいだ。

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