知ってしまった夫の秘密
「伯父さん！　ちゃんと真琴さんにも話しといてよ」


　佑さんが声をかけると、離れた位置にいたオーナーは仕込み作業の手を止めて私たちのもとにやって来た。


「あー、悪い悪い。うっかり真琴ちゃんに言うの忘れてた。俺ね、佑にこの店を譲ったんだ」

「え？」

「真琴ちゃんは今までどおり働いてくれたらいいから心配ないよ。俺はこの店を去るけど、今後は佑を助けてやってほしい」


　驚きすぎて一瞬ポカンとしてしまった。謎だらけで、なにから尋ねればいいか頭の中を整理しなければ。


「仙台にいる俺の母親……佑からすれば祖母にあたるんだけど、膝を悪くしてあまり歩けないんだよ。ひとりで住んでるんだけど、もう高齢だからほっとけないしさ」


　事情を聞けば、そういうことかとすぐに理解できた。
　片桐さんは家族で仙台のご実家に移り住むのだそうだ。
　佑さんは働いていたレストランを辞め、この店を引き継いでくれたらしい。

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