再愛婚～別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています～

　訳がわからない様子の央太を見て、ノアは辛辣な態度を深めた。

「君と真綾は今、無関係だろう？　いくら昔の恋人だからといって現在のプライベートに土足で踏み入る権利はないと思いますが」
「知って……」
「ええ、もちろん。だって、僕たちは恋人同士ですよ？　お互いに何でも話す仲だ」
「……っ」

　何かを言いかけた央太だったが、苦い顔をして口を噤む。
　そんな彼を見て、ノアは表面上はいつもの人当たりのよさを見せた。

「ああ、申し訳ない。これから会議があるんだ。僕たちは、これで失礼するよ」

　真綾の腰に回していた手をどけ、今度は背中に触れて促してくる。
　それに応えるように、後ろ髪引かれる思いをしながらノアとともにオフィスビルへと入った。

　未だに背中に央太の視線を感じたが、それを知らないふりをして彼の視界から逃れるようにエレベーターホールへと歩みを進めた。

　昼休憩はすでに終わっている時間で、社員はまばらだったことが救いだ。
　足元から崩れてしまいそうなほどに緊張していた。
　ホッと息を吐き出したあと、ノアに頭を下げる。

「助かりました。ありがとうございます」