再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
 ノアの優しさが滲みる。泣きそうになっていると、彼は途端にクスクスと笑いながら茶目っ気たっぷりに口角を上げた。

「会社では上司の立場でいるけど、プライベートは違うからね。僕も男だし」
「え?」
「真綾を狙う強力なライバルが出現しちゃったし。これからもっともっと真綾にアプローチしていくから。覚悟しておいてね」
「ノア、私はずっとお断りしていますが」

 ノアに助けてもらって本当にありがたく思っている。だが、それとこれとでは別問題だ。
 キツイ口調でキッパリと言い切ったのだが、痛くも痒くもなといった様子でノアは笑っている。

「でも、僕は真綾を手助けすることに決めたから」
「……」
「さっき永江先生に啖呵を切ってしまったからね。乗りかかった船だ。最後まで僕は永江先生に嘘をつき続けるつもり」
「ノア!」
「ほら、行くよ」

 エレベーターは指定階につき、ゆっくりと扉が開く。
 一緒にオフィスに向かいながら、通路に誰もいないことを確認する。そして、ノアの背中に声をかけた。
 
「ノアにこれ以上、迷惑をかけることはできません。いずれ永江先生と話し合いをするつもりです」
「どうやって?」

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