再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
 取りあえずミッションはクリアだ。このままあとは言葉を濁してしまえばいい。
 そして、彼とは距離を置く。そうすれば、央太は忘れてくれるはずだ。
 いや、忘れてくれなくては困る。

 真綾が抱えている問題は、今の彼には絶対に聞かせてはいけないはず。
 家庭を持っている央太に、「実は内緒で子どもを産んでしまいました」などと現実を突きつけてどうなるというのか。

 真綾が彼から離れた理由は、ただ一つ。央太に幸せになってもらいたかったからだ。
 家族からも祝福される結婚をして、幸せな家庭を築いてほしい。その一心だった。

 それなのに、幹太のことを耳に入れてしまってはいけない。
 彼は無視できないだろう。そういう人だってわかっている。だからこそ、何が何でもごまかし続けなければならないのだ。

 早く着けばいいのに、そんな思いでいっぱいの真綾に、央太は冷静な口調で聞いてくる。

「どうして、そんな嘘で切り抜けようとした?」

 何も言わずに逃げたいところだが、ここで逃げたとしても彼は追及の手を緩めたりはしないだろう。
 半ば諦めの気持ちを抱きながら、釘を刺しておくことにした。

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