再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
 彼から少し離れて階数を示すナンバープレートを眺める。
 そして、あくまで淡々とした口調で答えた。

「幹太の父親について探られるかと思ったからですかね」
「真綾」
「幹太の父親は、永江先生ではありません。貴方の知らない男性ですよ」
「……」

 気持ちが読めない無表情な真綾の話に耳を傾けていた央太に、自虐を混ぜながら小さく笑う。

「これで安心したでしょう?」
「安心?」

 央太は眉間に皺を寄せ、訝しげな表情になる。そんな彼を見て、真綾は冷静を努めた。

「貴方には何も迷惑はかかりません。ご安心を」

 今も尚、真綾の心を乱す央太にどうしたって苛ついてしまう。
 もう放っていてほしい。それが本心なのに、どうして彼はこうまで真綾を追求してくるのか。

 やりきれない思いが口調にもでてしまったようで、央太は慌てて取り繕ってくる。

「待て、真綾。どうして俺に迷惑がかかるんだ?」
「だって、ずっと勘違いしているでしょう? 幹太は貴方の子じゃない。そう言っているのに」

 なんだか悲しくなってきてしまった。
 彼に嘘をつき続けるのは、罪悪感が半端ない。だが、それは彼のことを思えばこそだ。
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