再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
それなのに、真綾の気持ちを踏みにじるように、央太は探ってこようとしてくる。
誰にも触れられたくない、その領域にズカズカと入り込んできては堪ったものではない。
視線を彼に向け、睨んでしまいたくなるのをグッと堪える。
「だって、央太さんは結婚しているでしょう?」
思わず彼の名前を呼んでしまう。だが、今の真綾はそれを訂正する余裕などなかった。
感情的になって荒ぶっている心を落ち着かせることができず、悲しみを彼にぶつけてしまう。
涙が浮かびそうになるのをグッと堪えていると、央太は心外だといった様子で否定してくる。
「何を言っているんだ?」
「とぼけなくてもいいですよ」
「とぼけてなんて!」
「もう、いいです」
「真綾!」
感情的になっているのは、央太も一緒のようだ。ハッと我に返り、エレベーターの扉が開いたことにお互いが気がつく。
気まずい思いを抱きながら、エレベーターを出る。
「真綾」
「静かにしてください。こちらへ」
午後から抑えていた会議室へと央太を連れ込み、扉を閉めた。
このままこの話を放置しておいては、お互いわだかまりも残るだろう。