再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
 そこには、乗り換え案内アプリが表示されていたのだが、今から乗ろうとしていた電車が遅延していると表示されている。

「ここから電車に乗るとしたら、○○駅ですよね? この豪雨のせいで、電車は止まっていますよ?」
「う……」

 これは困ったことになった。電車が動くのはまだ時間がかかるのだろうか。
 どうすることもできず悩んでいると、雨が少しずつ弱まっていく。
 真っ黒な雲に覆われていた空だったが、少しずつ晴れ間が見えてきた。

 真綾は、空を見上げて央太に笑みを浮かべる。もちろん、警戒した笑みだ。

「大丈夫です。雨も止みそうだし、電車も」
「そんなに早く動き出すか?」

 先ほどまでのビジネスライクな装いは捨てたようで、普段通りの、真綾が知っている央太の口調で言う。
 辺りには再び誰もいなくなった。状況をいち早く判断している央太に舌を巻く。

 だが、真綾としては今はそんなことはどうでもいい。早くこの場を立ち去りたい。央太の近くにいたくない。その一心だ。

 少しでも長く央太の近くにいれば、色々と悟られてしまう可能性が高くなる。
 彼にバレてはいけない、あれこれが真綾にはあるのだ。
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