再愛婚～別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています～

　チラリと処置室に視線を向けると、今も幹太は治療中だ。まだ少しかかりそうだと判断し、その隙にと扉を開いて外に出る。

　こちらの視線にも気がつかず、彼は真剣な表情で指示をし続けていた。

「ああ、……財務諸表は確認したか？　そう、リスク回避は絶対だ。まずは、買収先に出向こう。……もちろん、俺も同行する。必要書類を用意しておいてくれ。そちらについてから目を通すから」

　こんなふうにビジネスマンの顔をする央太を初めて見たが、やはり見惚れてしまうほど素敵だ。

　感嘆のため息とともに彼を見つめていると、視線が合う。
　ドクンと一際大きく鼓動を高鳴らせてしまい慌てて目線をそらした。

　少しすると、ようやく話を終えた央太は、携帯をジャケットのポケットにしまいながら苦笑いをする。

「悪い。もう、会計は終了したか？」
「いえ……。まだ少しかかりそうなので、永江先生はお仕事に戻られた方がいいかと」
「……」
「こちらは、もう大丈夫です。タクシーも通常通りになりつつあるようなので、タクシーを使って帰ります」
「真綾」
「お仕事が忙しいときに、本当にありがとうございました」