追放公爵令嬢ですが、精霊たちと新しい国づくりを頑張ります!

「今、私はここで宣言する!」

 フェアスクエア王国王太子の十八歳の誕生祝いのパーティーで、主役である王太子ジョフロワが予定にない宣言を始めたことに招待客たちは驚いた。

 ジョフロワの隣にはトレヴィル公爵令嬢であるソレーヌが寄り添うように立っている。
 リゼットはそんなふたりを少し離れたテラス側の窓際から見ていた。
 自身の婚約者であるジョフロワと義姉のソレーヌの親密さにはもう慣れている。

(今度はいったい、なにを始めるつもりなの……?)

 ふたりからの――特にソレーヌからの嫌がらせはいつものことだった。
 十年前、リゼットが実の両親であるルヴィエ夫妻の許(もと)を離れ、遠縁に当たるトレヴィル公爵家の養女となった時からソレーヌには嫌われているのだ。

 だがそれも仕方ないことだった。
 それまで公爵家のひとり娘として甘やかされていたソレーヌにとって、突然現れた義理の妹が父親の関心を奪ったばかりか王太子の婚約者になってしまったのだから。

 リゼットが公爵家の養女となったのは〝精霊王との約束の証〟と呼ばれる腕輪のような濃い痣を右手首に持っていたためだった。
 痣の濃さは精霊使いとしての力の強さを表す。

 近年では王家の者でさえ痣は薄く、腕輪は不完全な形を成して生まれてくるようになっており、はっきりとした形の濃い痣を持ったリゼットは王家の力の存続のためにも必要とされていたのだ。
 そのはずだった――。
< 1 / 9 >

この作品をシェア

pagetop