追放公爵令嬢ですが、精霊たちと新しい国づくりを頑張ります!
「私は今この時をもって、リゼット・トレヴィル――いや、リゼット・ルヴィエとの婚約を破棄する!」
この宣言にはさすがにリゼットも驚き、目を丸くした。
婚約解消も時間の問題だとは思ってはいたが、まさかこの場でいきなり告げられるとは思ってもいなかった。
本来なら然るべき手続きを粛々と行うべきである。
どうやらジョフロワの父である国王さえも知らなかったようで、側近たちとともに驚きの表情を浮かべていた。
そもそも、この騒ぎが始まった時点で国王が諫めるべきなのだが、ジョフロワの痣の濃さ――力の強さを恐れてなにも言えないのだ。
「リゼット・ルヴィエ、そなたの罪は重い! だが、心優しいソレーヌの嘆願に免じて、死罪ではなくアークテッドの地への追放処分で許してやろう!」
会場内のひそひそ声が大きくなったのは、アークテッドの地への追放処分が死罪と変わらないほどに重いからだった。
何年も前からアークテッドの地には魔獣が頻発して人々を襲い、今では無法地帯となっているらしい。
だが、リゼットは追放よりもなによりも、ジョフロワの言う罪がなんなのかがわからなかった。
「殿下、罪とはいったいなんのことなのでしょう?」
「しらを切るか、ずうずうしい! そなたは両親とともにトルヴィル公爵を騙して養女となったばかりか、私の婚約者となることを謀り、ソレーヌを虐めて追い詰めたであろう!」
「いいえ、まさか……」
リゼットも両親も、本当は貧しくても家族みんなで暮らすことを望んでいたのだ。
そこに痣の噂を聞いたトレヴィル公爵がやってきて、リゼットを養女にすると一方的に告げた。
この国の将来のためだと公爵に言われて逆らえるわけもなく、両親は泣く泣くリゼットを手放したというのに。