追放公爵令嬢ですが、精霊たちと新しい国づくりを頑張ります!
あの別れの日のことを忘れたことなど一度もなく、両親とはもう十年も会っていない。
リゼットは困惑しつつ、ジョフロワの隣で庇われるように立つソレーヌを見た。
目が合った瞬間、ソレーヌは満足げに微笑み、また今にも泣きそうな表情に戻る。
すぐにリゼットは視線を移し、ジョフロワの背後に立つ公爵を――養父を目に留めてホッと息を吐いた。
ジョフロワの勘違いだとすぐに養父が訂正してくれるだろう。
しかし、リゼットの期待は裏切られた。
「殿下、このたびのことは私にも非があります。まさか〝約束の証〟を偽造するとは思いもせず、この娘の両親の言葉を迂闊にも信じたのですから。この国の将来のためだなどと!」
「お義父様! なにをおっしゃるのですか!? 偽造だなんて――」
「黙れ、リゼット! では、それほどの痣を持ちながら、なぜ力を使えぬ!? そもそも、その痣はなんの属性なのだ!? 誰も見たことのない紋様であるのは、そなたたちが見よう見まねで墨でも入れたからであろう! お前たちは嘘ばかり吐き、私たちを誑(たぶら)かしたのだ!」
「いいえ、違います! 私や両親がそのようなことをするはずがないと、お義父様が一番ご存じではないですか!」
養父である公爵からの謂われなき非難に、リゼットは強く反論した。
確かに濃い痣があっても、リゼットは精霊の力を操ることはできない。
どんなに薄くても痣があればわずかながらでも炎や水を操ることができるはずなのだ。
そのため、濃い痣を持ちながらなんの属性の力も操ることもできないリゼットのことを疑う声は以前からあった。
しかも、力を使えないリゼットは嘘をつくようになったと思われていた。
――精霊の姿が見える、という嘘を。