架空女子でごめんね
第1章
第1話 星空みたいな恋心
ーーこんなはずじゃなかったのに。
ただ、私は……ーー
7月のある日。
C市立C中学校。
生徒用駐輪場の片隅で。
私、津山すずめは、軽く絶望していた。
(自転車の鍵が、無い!?)
通学鞄の中をがさごそと探ってみる。
だけど、無い!
(どうしよう、歩いて帰る?)
家まで歩いて帰れないことはないけれど、自転車で帰るより倍の時間はかかる。
それに。
鍵を失くしてしまったことが、どうしても気にかかる。
(……見つけなくちゃ)
もしかして自転車に鍵を差したまま?
そう思って確かめるけれど、鍵の姿は無い。
私の赤い自転車の周りをキョロキョロ見回す。
無い。
どこかに落としたのかな?
かがんで地面を注意深く探す。
でも、無い。
その時。
「何してンの?」
背中から声がした。
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