架空女子でごめんね
「あ、笑った!」
「あ……、えっと」
「良かった。鍵失くして落ち込んでると思うけれど、笑ってくれて」
え?
徹平くんは続ける。
「さっきからすずめちゃん、全然笑わないなぁって思ってたんだ。持ち物失くしたんだし、そりゃ誰だってへこむよな?」
立ち止まって私を見つめる徹平くん。
「でも笑った表情、見せてくれてありがとうな。なんかちょっと安心した!」
「徹平くん……」
思わず声に出して呼んでしまって。
私はハッとした。
(しまった!)
背の高い男子が徹平くんの名前を呼んだ時から。
心の中で「徹平くん」呼びをしてしまっていたから、つい……。
徹平くんを見ると、目を丸くしてこちらを見ている。
「な、中田くん」
呼び直してみる。
徹平くんは「あはっ」と笑って、
「なんで?徹平でいいよ」
と言った。
それから私の背中をポンッと軽く叩いて、こう続けた。