架空女子でごめんね
「は?」
納得いかないという表情の伊藤さんに、後藤くんは言った。
「この子がその、めっちゃ可愛い子だったの!オレもビックリしたけれど、声が同じなんだよ」
「知らないよ、声なんか!」
「オレだって、そんなの知らないよ!」
後藤くんと伊藤さんがケンカを始めそうになった頃。
「何、なんの騒ぎ?」
こちらへ歩いて来る男子が、声をかけた。
徹平くんだった。
「あ、徹平!お前に電話しようとしてたんだ」
「何?なんで?」
後藤くんは私を再び指差して。
徹平くんが、私を見つけた。
「……っ!」
その目が。
驚いているのか、怒っているのか、よくわからなかった。
「こんな子、知らないでしょ?」
伊藤さんが徹平くんのそばまで行く。
「何か勘違いしてるんじゃない、この子」
伊藤さんのトゲトゲしい言い方に、私はひるみそうになる。