架空女子でごめんね

「は?」



納得いかないという表情の伊藤さんに、後藤くんは言った。



「この子がその、めっちゃ可愛い子だったの!オレもビックリしたけれど、声が同じなんだよ」

「知らないよ、声なんか!」

「オレだって、そんなの知らないよ!」



後藤くんと伊藤さんがケンカを始めそうになった頃。



「何、なんの騒ぎ?」



こちらへ歩いて来る男子が、声をかけた。




徹平くんだった。




「あ、徹平!お前に電話しようとしてたんだ」

「何?なんで?」



後藤くんは私を再び指差して。

徹平くんが、私を見つけた。



「……っ!」




その目が。

驚いているのか、怒っているのか、よくわからなかった。



「こんな子、知らないでしょ?」



伊藤さんが徹平くんのそばまで行く。



「何か勘違いしてるんじゃない、この子」



伊藤さんのトゲトゲしい言い方に、私はひるみそうになる。



< 101 / 132 >

この作品をシェア

pagetop