架空女子でごめんね

徹平くんが選んだ場所は。

以前ふたりで来た、D町自然公園。

教えてくれた公園の中に流れる川がある場所まで、私達はほとんど話さずにやって来た。



徹平くんの足が川の前で止まったことを合図に、私は口を開いた。



「……騙してごめんなさい」

「……」

「私が、津山すずめが『美鳥』だって偽っていたことは、許してなんて言えないです」

「……」

「本当にごめんなさい」



深々と頭を下げる。

徹平くんがどんな表情をしているのかは、わからない。



(当然怒ってるよね)



怒られて当然だもん。

ずっと嘘ついてたんだから。



「なんで、嘘ついてたの?」



徹平くんの声。

意外にも落ち着いた、優しい声だった。



なんで嘘をついたか。

それを答えるには、勇気が要るから。

私は何度か深呼吸をしてから、ゆっくりと答えた。






「……好き、だから」





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