架空女子でごめんね
「え?」
徹平くんの驚いた声。
私は顔を上げた。
徹平くんは目を丸くしている。
「徹平くんのことが、好きだからです」
「……」
「私が自転車の鍵を失くした時、徹平くん達は一緒に鍵探しをしてくれたんです。覚えていますか?」
「……うん、覚えてるよ」
徹平くんはそう言って、少しうつむいた。
「あの日、一緒に帰ったよね。すずめちゃんの家まで、ふたりで長い時間かけて歩いて帰った」
「……はい。だけど私にとって、あの時間は短く感じられたんです。ドキドキして、嬉しくて、本当はこっそり思っていました」
「何を?」
「まだ家に着いてほしくないなって」
目の前が揺らぐ。
涙があふれてきた。
「ずっと、あの日からずっと。……大好きだったんです。徹平くんのこと」
涙が1粒、こぼれた。
「いつもすみっこにいる私には、徹平くんは眩しくて、遠くて。だけど近づきたかった。隣にいきたかった」