架空女子でごめんね

「……本当だよ」



徹平くんの声が、震えている気がした。



「ショッピングモールの時から、『美鳥』ちゃんがすずめちゃんだって、オレはわかってた。なんで嘘の名前を言うんだろうってずっと考えてた」

「……はい」

「だけど、いつか話してくれるかもってずっと待ってたんだ。『美鳥』ちゃんのキミに会うたびに、いつもどこか寂しかった」

「……っ」



徹平くんの目に、涙が溜まっている。

その黒く輝く目から涙の粒がこぼれた時。

徹平くんは、こう言った。






「オレもキミが好きだから」






!!






「えっ、あれ?でも、徹平くんは、『美鳥』が好きで……、あれ?私のことを知ってたってことは……?」



頭の中がこんがらがる。

そんな私を見て徹平くんは、
「あはっ」
と、泣きながら笑った。



「言っておくけど、ややこしくしたのはすずめちゃんだからな」



そう言って、ほんの少しいじわるな表情をした。


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