架空女子でごめんね
暗くなってきた住宅地に、ポツポツと明かりが灯る。
我が家の玄関前もほわっと明るい。
「そっか。じゃあ、オレはここで」
徹平くんは自転車にまたがる。
「間に合いそうですか?」
私の問いかけに徹平くんは、
「ん?」
と、聞き返してくる。
「さっきの人達とどこかに行く約束をしていたみたいだったから」
「あぁ、アレね!」
徹平くんは、
「大丈夫だから、気にしなくていいよ」
と、自転車のペダルに足をかけた。
「またな!すずめちゃん」
そう言って、夜の道に進み出す。
去って行く後ろ姿を見ていたら。
徹平くんは自転車を止めて、振り返った。
片手をあげて、私に手を振ってくれる。
ただ、それだけのことだけれど。
まるで自分がプリンセスにでもなれたみたいな。
ときめきの魔法に包まれた瞬間だった。
私も両手をあげて、徹平くんに手を振り返す。