架空女子でごめんね
前の席の山川さんが突然、振り返って私を見た。
「津山さんさぁー、どうしたのさ?」
イヤホンから流れてくる音の隙間で。
山川さんがそう言ったのを、確かに聞いた。
イヤホンをすぐに外して、
「どうしたのって、何がですか?」
と、聞き返す。
山川さんは、
「何がって。あんたさっきからため息何回吐いてんの?って話だよ」
と、言った。
「あ、ごめんなさい」
「いや、いいんだよ?でもさぁー、なんか元気ないのかなって」
山川さんの席に集まってお弁当を食べていた、福本さんと島田さんも、ひょこっと顔を出して私を見る。
「何なに?マジ浮かない顔してるよー」
福本さんが自分のお弁当箱を袋に片付けつつ、「そう思うよね?」と他の2人の顔を交互に見た。
「恋の悩みだったりして」
ケラケラと笑いながら、島田さんが言う。