架空女子でごめんね
ふと。
棚に平積みされていたある本に目がとまる。
『今日から始める』『初心者向け』の文字が、私の心に爽やかな風を吹かす。
可愛い女の子が鏡に向かっている表紙の写真が、脳内にときめき物質を次々と生産していく。
手にとって。
中身をパラパラ見る。
気づくと私は、手にした本をそのままレジまで持って行っていた。
それから。
数日が経った。
私は学校から帰ると洗顔して。
化粧水、乳液で整えたあと、本を片手にメイクの練習に励むことが日課になっていた。
メイクのことでわからないことがあると、メッセージアプリを開く。
『ファンデーションの粉が口元のあたりで固まっていることがあるのですが、解決方法はありますか?』
1年2組のグループメッセージに書き込むと、誰かが必ず返事をしてくれる。