架空女子でごめんね
「今さっき帰ろうと思って鞄の中を探したら、失くしたことに気がついたんです」
背の高い男子はスマートフォンを取り出して、画面を見た。
「徹平、遅れるよ?」
私を見ないようにして、徹平くんに声をかける。
私も徹平くんに、
「あの、大丈夫ですから」
と、小さく言う。
徹平くんは他の男子3人にニコッと笑って、両手を合わせた。
「先に行ってて。オレ、鍵探しを手伝ってから行くわ」
え?
私も男子3人も、キョトンとしてしまった。
「そんな、みんな揃って目を点にしなくても」
徹平くんが戸惑う。
そんな徹平くんを見て、背の高い男子が私に、
「自転車の鍵って何か目印になるもの、付いてる?」
と、聞いた。
「え?」
「オレらも探すから。あんたと徹平だけより、人数は多いほうがいいっしょ」
他の男子にも「早く見つけよーぜ」と声をかけている。