架空女子でごめんね

駅前のコンビニ。

駐車場のすみっこ。



徹平くんの姿を見つけた。



今日は同じ制服を着た数人とアイスクリームを食べている。



徹平くんの隣には。

髪の毛の長い、きれいな女の子。

ぱっちりとした目。

ぷっくりした唇。

桃色の愛らしい頬。



(……まさか、彼女?)



親しそうに話しているふたりの姿は。

「お似合いのカップル」という言葉がぴったりで。

私の心をざわつかせる。



徹平くん、ステキだもん。

恋人がいたって、おかしくないじゃない。

それにあんなに可愛い女の子がそばにいるなら。

徹平くんだって好きになっちゃうよね?



(早く帰ろう)



帰って、メイクの練習しなくちゃ。



でも。



私がメイクする理由って。

もう、ないんじゃない?



歩く速度がどんどん遅くなっていく。

その時、背中から笑い声が聞こえてきた。



徹平くんの、明るい笑い声。



< 30 / 132 >

この作品をシェア

pagetop