架空女子でごめんね

私がずっと遠くから聞いていた、大好きな声。



(めげるの、はやくない?)



めげて。

逃げ出すことは。

きっといつでも出来る。



最初から実る当てなんてなかったじゃない。

恋人がいるかもしれないけれど。



(……ううん、まだ恋人じゃないかもしれないじゃん)



不安になって。

悪いほうへ決めつけるのは、やめよう。



気持ちを伝えたい。



そばにいたい。



隣にいたい。



(それが叶えられなくても)



ゆっくり歩きながら。

クラスのみんなの顔を思い浮かべた。



(今ここでめげて投げ出すのは、イヤだよ)



「自信がほしい」



呟いた言葉が、自分の胸の真ん中にすとんと収まる。

そう。

私は、自信がほしい。



(不安になって悪いほうへ考えるのも、自信がないからなんだ)



自分に言い聞かせるように。

私は「めげちゃダメ」と心の中で唱えながら。

ゆっくりだけど歩き出した。



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