架空女子でごめんね
第2章
第1話 架空女子
アジサイの季節。
連日の雨降りも、アジサイの葉の上にいるカタツムリは嬉しそう。
私はメイクの練習をずっと続けていて。
今ではメイクをしたら、別人のように変身できる。
ノーメイクのまま外出をすることに、ほんの少し抵抗を感じるくらい。
メイクの技術が上達していくと。
今まで着ていた洋服に、満足が出来なくなった。
私の部屋のクローゼットの中にある、モノトーンの落ち着いた洋服よりも。
ファッション雑誌に載っているような、華やかで流行の洋服を着たくなった。
(今月はもう、ピンチだけど)
サイフの中をのぞく。
毎月あまり使っていなかったおこづかいも。
今月はどんどん使ってしまった。
もう少ししたら貯金箱のフタを開けてしまうかもしれない。
今日は日曜日。
朝から身支度を整えて。
私は玄関の全身鏡を見つめて、最終チェックをした。
「どこかへ行くの?」