架空女子でごめんね
リビングから廊下に出てきた2つ年下の妹のひばりが、興味津々といった様子で声をかけてきた。
「洋服を買いに……。ねぇ、この恰好って大丈夫だと思う?」
「え?大丈夫だよ。お姉ちゃん最近オシャレだし、可愛いよ」
そう言ってひばりは右手の親指を立てた。
「何か買ってくるものある?ショッピングモールまで行くけれど」
「んー、面白そうな小説って言いたいところだけれど、自分で探したいからやっぱりいいよ」
ひばりはそう言って、銀色のフレームの眼鏡のフチをくいっと持ち上げた。
白いTシャツにデニム姿のひばり。
左手に持っている分厚い本はきっと、ひばりが最近ハマっている海外のミステリー小説だと思った。
「気をつけてね」
ひばりに見送られて、私は家を出た。
小雨が降る中、電車に乗ってショッピングモールを目指す。
駅前のコンビニを通る時、ちょっと横目で見たけれど。
徹平くんの姿はなかった。