架空女子でごめんね

(や、やばい)



この人もいたのか、と焦る。



(徹平くんにだけ、話したかったのに)



「誰、この子。後藤(ごとう)の知り合い?」



茶髪の男子がニヤニヤして、ガッシリとした体格の男子に尋ねた。

そのガッシリとした体格の男子、後藤くんは、
「いや、オレっていうより、徹平じゃね?」
と、徹平くんを見る。



全員が徹平くんを見つめる中、徹平くんは曖昧に笑った。



そんな徹平くんに、
「なんだよ、照れんなよー」
と、後藤くんはバシバシ叩いて、
「『美鳥』ちゃん、何か用事?もしかしてオレにだったら嬉しいけどさー」
なんて、冗談っぽく言う。



逃げたい。

逃げだしたい。



でも、逃げられない……。



私は観念して、
「じ、実は……」
と、口を開いた。



……実は私、『美鳥』じゃないんです。

本当の名前は津山すずめで、地味なすみっこ女子です。



(ほら、言わなくちゃ。本当のことを……!)



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